(三浦建太郎 白泉社)

私がこの漫画を初めて手にした時から、もう七、八年になります。以来、精神的に苦しいとき、何か突破口を探しているときには常にこの本が座右にありました。
 この本は“魔”ものが出てくるファンタジー作品ですが、主人公は超人的な力をもちながらあくまでも人間です。私はそこに共感を、そして教訓を感じています。
 夢、恋愛、性、友人、暴力、強さ、そして弱さ…そうしたことがこの漫画ではテーマとなっています。つまり、一言でいえば、“生きること”です。そして、そのテーマに対する主人公の姿勢は“もがくこと”です。精神的にも肉体的にも打ちのめされながら、彼は剣を杖にして立ち上がります。
 我々は現実の生活のなかで様々な理不尽やままならないこと、そして恐れなどを数多く経験しています。それに立ち向かうこともあれば、目をつむったり、時には自身がその一部分となって身の安全を図ることもあるかと思います。
また、自分の価値観や理想が定まっていないために、そうした出来事をあいまいなままにして一生を過ごしていくこともあるでしょう。
 しかし、我々はそうした“自分”に果たして満足しているのでしょうか。受け入れることに人生の充足感を味わうことができるのでしょうか。また、仮に充足感を得られたとして、それが失われたときにどういう行動をとることができるのでしょうか。
 主人公であるガッツは少年時代から常に戦場に身を置いてきた剣士という設定です。彼は自分自身の生きる目的を見い出せないまま、ただその場を生き延びるために戦い続けます。彼は戦争で戦うことを生業とする、流れ者の傭兵なのです。
希望のない戦いのなかで、彼は友と呼べる仲間に出会い、女性を愛することになります。しかし今度は理不尽なほどの力を持つ“魔”にそうした者たちを奪われてしまいます。しかも、最高の友こそが“魔”になってしまうのです。
そこから再び彼の戦いが始まります。自分自身が“魔”にのまれる不安と戦いながら、暗く眠れない夜を戦い続けます。
 想定は空想に過ぎません。私はそれまであまり漫画を好んで読んでいなかったこともあり、当初はその設定や画風に馴染むことができませんでした。しかし、読み進めるにつれて、そうした設定は作者の思いを仮託したものに過ぎないのではないかと考えるようになりました。
この物語の“魔”と同様の、自分に対して加えられる理不尽な力は現実世界においてもたくさん存在するからです。そして、そのように捉えると、この空想の物語がにわかに現実の色合いを帯びてきました。
“もがき”続ける主人公のガッツが私に問いかけてきます。「お前はお前の戦場で戦っているのか?」(作中のセリフではありません)と。そして、ぼろぼろになりながらも戦い続ける彼の姿に私は勇気をもらうことができるのです。

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